公開: 2019年10月16日
更新: 2019年10月18日
自然界には、ウラン235とウラン238が存在しています。天然ウランには、この2つのウランが含まれています。ウラン238には、中性子が多く含まれているため、比重は重くなります。ウラン238は、安定した物質で、中性子を照射しても核分裂は起こりません。ウラン235は、不安定で、中性子を照射すると核分裂を起こして、数個の中性子を放出し、他の物質に変化します。このウラン235の性質を利用し、放出された中性子を次のウラン235に当てて、この効果でさらに中性子を放出させることを繰り返すと、大きなエネルギを取り出すことができます。これがウラン型原子爆弾の原理です。
ウラン235から放出される中性子の連鎖反応を利用するためには、大量のウラン235が必要になります。しかし、天然ウラン鉱石に含まれるウラン235は微量で、ほとんどがウラン238です。ウラン238が多いと、ウラン235から放出された中性子はウラン238に吸収されてしまい、連鎖反応が起きません。そこで、原子爆弾を作り出すためには、純度の高いウラン235を抽出する必要があります。そのためには、天然ウランからウラン235を抽出するための分離が必要になります。そのようにして分離・抽出されたウラン235を利用して核分裂を連鎖的に起こして爆発力を発生させる爆弾が、ガンバレル型原子爆弾です。広島に投下された原爆です。
天然ウランからウラン235を抽出するためには、大量の天然ウランが必要になります。天然ウランを重水の中に入れて、中性子を照射すると、ウラン235から放出された中性子の速度が遅くなり、放出された中性子はウラン238に吸収されにくくなります。そのため、重水の中では核分裂の連鎖反応を起こすことはできますが、中性子の速度が遅く、短時間で巨大なエネルギが必要になる爆発現象は起こせません。しかし、そのようにして核分裂を起こすと、核分裂によって発生したエネルギは、熱に変換され、残った物質は、プルトニウムと言う人工物質が含まれたものになります。このプルトニウムもウラン235のように不安定な物質なので、核分裂を起こします。
天然ウランに中性子を照射して、ゆっくりとした核分裂を起こし、その時発生する熱で水蒸気を発生させて、その蒸気の力を利用して発電を行うのが原子力発電です。この遅い核分裂を起こすために使われるのが原子炉です。原子炉を使うとプルトニウムを作れるので、ウラン235よりも核分裂を起こすための材料を、大量に生産することができます。こうして作られたプルトニウムを使って爆弾を作るための技術が、「爆縮」という方法で、その方法を応用して長崎に投下されたプルトニウム型原子爆弾が作られました。